この1ヶ月以上、アスペルガー夫との戦争が続き、やっと先日収束を迎えた。
どっと疲れている。
今日はせっかくなので、そのことをネタにして一部始終を詳しく公開してみようと思う。
参考になるかはわからないが、アスペルガー夫を持つ妻側の、リアルな喧嘩風景の全貌をお送りできればと思っている。
喧嘩の際、アスペルガーに対しどんな言葉をかけ、どんな心理戦で喧嘩に臨み、どうやられてやり返しているか、これから詳しく書いていきたい。
アスペルガーなどの発達障害疑いのある夫・妻・彼氏・彼女を持つ方なら共感してもらえるのではないだろうか。
終わることのない、彼らとの不毛な闘いの辛さを。
彼ら発達障害の人々と接する中で、日々苦戦するのはその一番近くにいる配偶者や、彼氏彼女だ。
日々、喧嘩や言い合いの連続。
ひとつの喧嘩が終われば、また次の喧嘩の種が降りかかってくる。
喧嘩したら最後、その言い合いは交わることのない平行線をたどり、終わりが見えない。
まともなことを言っているこちらがまともじゃないような気がするほど、分かり合えない言い合いが永遠続く。
話は二転三転し、話しているとだんだんこちらの頭がおかしくなってくる感覚を覚える。
それほど、彼ら発達障害の人々とは、まともな話はできない。共感も得られない。
解決の糸口が皆無に思えるほど、先が真っ暗になってくる感覚に苛まれる。
私のここ1ヶ月の夫との戦争は、こんなことから始まった。
それは、平和な日々を過ごしていたある夜だった。
その夜、夫が仕事から家に帰ってくると、なんだか微妙な雰囲気だった。
あまり話さず、だまっていた。
彼は、よくそういうことを日頃からするタイプだった。
仕事でストレスを抱えていたりすれば、決まって黙りこくってなにも話さなかった。
その夜も、そういう何か仕事のストレスがあるのだろうと、何も話さない彼をそっとしておいた。
そうして夜も更けたころ、だんだんお酒も進み、なにやら今度はまくし立てるように饒舌に私に話しかけてきた。
内容は、彼はある2人の男性に腹を立てているという内容だった。
一人目は職場の部下。
その部下はどうしようもないほど役職を全うしておらず、その日2時間説教し、彼にひたすら思いをぶちまけたようだった。
それでもまだ彼に腹を立て、その部下の仕事っぷりには心底納得がいかないという内容のことを私にコンコンと説明してきた。
一度話し出すと、もう止まらなかった。
だんだん顔が赤くなり、カッカし出してきたのがわかった。
私は、「あ、なんだかまずい雰囲気だな」と感じていた。
そしてもう一人、腹を立てている人の話に発展し、いよいよヒートアップしてきた。
彼は個人的に親交の深いあるセールスパーソンに立腹していた。
なんでも、彼の態度が手のひらを返したような人を馬鹿にする態度をとってきたため、自分はもう彼を許さないといった内容だった。
なんだか暗雲立ち込めるその彼の突然の怒りモードに警戒しながら、巻き込まれぬよう話半分で聞いていた。
もう夜の1時を回っていた。
そんな私の遠巻きな態度に気づき、彼は「もう俺なんて寝たほうがいいよね」
と席を立ち、寝室に向かおうとしていた。
私はそのまま彼が寝てくれるといいなと思い、何も言わずそっと見送ろうとした。
その時だった。
彼が私の横を通る時に、なぜか私の肩を思いっきり「バシン!!!」と強くひっぱたいた。
そしてそのまま寝室へ歩いていった。
私はその瞬間彼に怒鳴った。
「なんで私が叩かれないといけないの!!?」
でも、彼は耳にも入っていない様子で、そのまま寝室へ向かっていった。
いきなり打たれ、文句を言っても気にも留めない彼に私はカチンときて、彼が去った後リビングルームのドアをバシンと締めた。
その「バシン」という大きな音が、彼がキレる引き金になったのだろう。
寝室に行った後、その部屋付近から「ドンドン!!!!バンバン!!!!!」
と激しく暴れる音が聞こえてきた。
私は呆れると同時に、恐怖を覚えた。
あぁ、ついに暴れ出した。
一体、何をしているのだろう。
その後静かになったので寝たのかと思ったら、10分ほどしたらまたリビングに彼が戻ってきた。
私の前に現れた彼は、目が座って完全に危ない顔つきだった。
私は恐怖で、
「一体なにをそんなに暴れていたの?」
「そんなことをされて、一緒に隣で寝ようとは思わないよ。
私は一人リビングで寝ようと思った。
というか、一体私が何をしたっていうの?」
と問い詰めた。
でもその時点で、すでに彼に言葉のキャッチボール能力は完全に失われていた。
代わりにこんな言葉が返ってきた。
「俺がリビングで寝ればいいんだろ!!」
「そんなに俺が嫌なら出てってやるよ!!!」
もう、ダメだと思った。
こんなキレる男とは本当にやっていけない。
家庭をこんなに危険にさらす人とはこれ以上いられない。
そうして、彼をリビングに置いて私は寝室へ向かった。
そうしたら、寝室への通路がなにかおかしい。
ガラスの破片のようなものが沢山落ちていた。
一体なにが起こったのかとあたりを見回すと、原因がわかった。
彼の携帯だ。
彼の携帯の液晶画面が、ものの見事にバリバリに割れていた。
また、心の底から呆れた。
あぁ、ドンドンバンバン音がしていたのは、携帯を投げつけて粉々にしたからだったんだね。
本当に、危ないこの人。
どう投げたら、こんなに携帯が粉々になってしまうのだろう。
もう、彼とさよならしないといけない。
いや、もう離婚するしかない。
明日、必ず彼に離婚を突きつけよう。
もう、我慢ならない。
そういう決意を胸に、その夜私は一人で一夜を明かした。
翌朝は、彼と顔を合わさないように過ごした。
そうして、彼が帰宅する夜を待って、彼と対決する心の準備を整えていた。
彼は仕事中、「何してるの?」などと、何事もなかったようなメールを私に送ってきた。
私は「頭がおかしいの?昨夜の騒動は何事?」とメールを返してみたが、返答はなかった。
そうして、本当に何事もなかったかのような素振りで、彼は夜、家に帰ってきた。
「ただいま〜」と何食わぬ顔で帰ってくるなり、彼にいった。
さぁ、ここから私がやり返す番だ。
ただで済むと思うなよ。
100倍やり返す闘志に燃える私の、彼への攻撃が始まった。
「一体どういう神経で何事もなかったかのように私に話しかけてくるの?」
「一つだけまず一番はじめに聞かせて。
昨日のことはどこまで覚えてるの?」
そう鬼の形相で問いかける私に、彼はこう答えた。
「覚えてたり、覚えてなかったりかな。」
「私の肩を思いっきり叩いたのは覚えてるの?」と聞くと、
「叩いてないよ。ポンポンってやっただけだし。」
と、完全に記憶のすり替えをしていた。
「出てってやるよ!って私に怒鳴ったのは覚えてるの?」
と次に聞くと、
「覚えてない」と彼は答えた。
その返答一つ一つが全て私に絶望をもたらした。
あぁ、やっぱりもうだめだ、と思った。
発達障害の典型的な症状だが、彼らには「記憶障害」がある。
特に短期記憶が欠けている。
そうやって、昨日のことも忘れてしまうのだ。
また、かすかに覚えていても、自分の都合のいいように覚えている。
悪いことをしても、悪い部分は覚えておらず、記憶を自分のいいようにすり替えていく。
彼はこう言って、遅ればせながら反省の色を示してきた。
「昨日はちょっと飲みすぎちゃって、申し訳ないことをしたと思ってる。」
私はこう返した。
「原因がお酒だと思ってるの?そうではないよ。
そう思ってる限り、なにも解決できないよ。
原因は発達障害だから。それが問題だと自覚しない限り、永遠に問題は解決できないよ。
急にキレるのもそう。翌日に昨日のことを覚えていないのもそう。
それはお酒のせいではなく、発達障害の症状だよ。」
「あなたが自分のアンガーマネジメントができない限り、一生円満な家庭が築ける日はやってこないよ。
自分で必死に、一度自分の怒りをコントロールする方法を探してみるしかないんじゃない?」
「でも、もう私はあなたとはやっていく気はないよ。
そんなに家庭の安全を脅かすのが夫であってはいけないでしょう。
次キレたら離婚するって、前回キレた時に約束したよね。
こうやって今回キレて、それは約束通り離婚するよ。
あなたがどれだけ謝ろうが、もう私には関係ないから。」
と、離婚の意思を表明した。
その時、実際私の離婚の意思は本心80%、ハッタリ20%だった。
別に本当に離婚してもいいと思っていた。
また、もし私が折れて離婚しなかったとしても、ここで死ぬほど彼を脅しておいて今後の布石にしようと思っていた。
正直、本気で離婚するかどうかは、私自身決めかねていた。
今後の彼の出方次第で、答えを出そうと考えていた。
彼の出方は、ただただ平謝りする道を選んだ。
ひたすらこういった言葉を並べ立ててきた。
「ごめんなさい。」
「許してください。」
「離婚するのだけはやめよう。」
「頑張るから。」
「もう絶対キレないようにするから。」
私はひたすら彼を拒否し、全身全霊で拒絶した。
「もう、どう謝ったって、なにをいったって無駄だよ。
やり直す気もないし、今後あなたとやっていく気もサラサラないから。」
「一人で生きていく準備した方がいいよ。もうすぐ私はこの家からいなくなるし。」
「別にあなたがいなくても私は自分の人生幸せに生きられる自信あるからね。」
「もう二度と会うこともないと思うけど、連絡してこないでね。」
「あなたは自分が一番大切だと思ってる人を傷つけて遠ざけることしかできないんでしょう。そうやってこれからも寂しく生きていけばいいんじゃない。」
「後悔してからでは遅いからね。全て失ってから、本当に大切なものに気がつけばいいんじゃない。あなたは、そういうやり方でしか気づけない人間なんでしょう。でも、失ったものは簡単に元どおりにならないよ。」
ひたすら、彼にリアリティを持たせる言葉を投げかけ続けた。
発達障害者は、想像力が欠けている。リアルにイメージすることができない。
将来のイメージや、誰かがいなくなった後のイメージなんて、実際に起こってみないとわからないのだ。
だから、私がいなくなるとどうなるか、それは、私本人が事細かに彼に説明してイメージさせるしか方法がない。
彼が「妻」という存在を傷つけ、妻が去ったら自分がどれだけ後悔した生活を送ることになるかは、彼にいろいろな言葉でそれをイメージさせるしか方法がない。
なので、徹底的に具体的にイメージできる言葉で、彼に想像させることを試みていた。
「離婚届にサインしてもらったら、すぐ私は実家に帰るから。
そうしたら、もう私はこの街にいる理由はないから、すぐ家を出るからね。
仕事も辞めるし、引っ越ししたらもう顔を合わせることは一生ないと思うから。」
「そうしたら、今度は自分を大切にしてくれる人を見つけて再婚するから、連絡してこないでね。」
発達障害特有かもしれないが、それほど彼らの返答にバリエーションはない。
「ごめんなさい。」
「お願いだから離婚とか言わないで。」
「離婚するために結婚したんじゃないから。」
「頑張るから。」
彼は同じ言葉でひたすら私を説得し続けた。まったく説得力に欠けるのだが、それが彼の精一杯だった。
「数日ちょうだい。そこで離婚するかは答えを出すから。」
と彼にいい、しばらくこう着状態を続けた。
その時点で、私の中では今回は離婚までしなくていいと結論づけていた。
なぜなら、彼をずっとみている中で、少なからず結婚当初に比べて改善は見られているからだ。
前なら、決して自分が発達障害だとレッテルを貼られることを受け入れられなかった。
でも今回は、私にそう指摘されてもキレ返してくることはなくなった。
真摯に反省している様子は伝わってきた。
以前は、反省することもできなかったのだ。
赤ちゃん並みの改善ではあるが、改善していっていることに、希望を感じることも事実だった。
また、結婚して2年半。
赤ちゃんがハイハイから、初めて立って歩き出す過程を見守っている気分だった。
成人には程遠い。
でも、いつか必ず走れる時がくる。
そんな、赤ちゃんの過程を見守る心境で、一筋の希望はまだ捨てずに持っていた。
ただ、離婚しないという決断の線引きとして、彼が次にキレたら本当に離婚するということに同意することが必須だった。
だから、彼に
「次にキレたら容赦なく離婚するからね。それは約束してくれる?」
と問いかけた。
その度に彼は曖昧な返事しか返さなかったが、私は折れなかった。
何度も何度も言い続けた。
次はないということを。
彼も「わかった。」と了承した。
そうして数日後、私は彼にこう伝えた。
「離婚は今回はしない。
でも、次に同じようにキレたら容赦なく離婚する。
そして、今回離婚はしなくても、簡単にあなたへの気持ちは戻らない。
すぐに好きだと感じることもないし、あなたへの愛情もしばらくは戻ってこない。
だから、すぐ仲良くしてくれと言われても無理だし、時間がかかる。
それだけは理解して。」
「そして、約束してほしいことがある。
それは、人が嫌がることはしないってこと。
シンプルだけど、決してあなたができていないこと。
人がされたら嫌なこと。それを私にしない。
そんな人として当たり前のことを、どうかできるように努力していって。」
こうやって、私は離婚の意思を取りやめ、うわべだけは通常の夫婦に戻ることにした。
でも。
やはり、私の彼への気持ちは、そんなに思うようにいかなかった。
とにかく、彼のやることなすことにイライラが止まらない。
その後そんな日々が続いて、自分でもコントロールができなくなっていた。
彼と出かけても、彼の嫌なところしか目につかない。
彼の言動に、行動に、一挙一動に、イライラが止まらなかった。
それはもう、生理的に彼を嫌う精神状態に陥っていた。
顔を見るだけで嫌気がさした。
触れられるだけで殺気を覚えた。
人をもう一度好きになるって、どれだけ難しいのだろう。
人を好きになることは、決して自分でコントロールできない。
そう感じた1ヶ月だった。
ひたすら、イライラと闘い、その都度イライラする元凶について彼と話し合った。
ある時は彼の身勝手さに、ある時は彼の元カノ関係の出来事に。
来る日も来る日も、なにかしらの出来事が私をイラつかせていた。
一つ解決できたかと思えば、またすぐ次のイライラがやってきた。
もう、止められなかった。
そうして、私のイライラに耐えかねた彼は、話し合いを求めてきた。
「そんなに俺のことが嫌いなら、もうあなたを手放すしかしょうがないのかなと、自分でも覚悟できてきたんだよね」
「こんなに俺のことを憎らしそうに睨みつけるあなたを見て、もうどうしょうもないなって」
と彼が言った。
本当に、彼へのイライラが止まらなかった。
なので、正直に全部彼に話した。
「私も自分自身コントロールできなくて。
人を好きになろうって、努力してもどうしても無理だと感じて。」
「もう、頭がおかしくなりそうで。」
「一緒にいるのが辛くて、しんどくて、楽しくなくて。」
ひたすら、彼への不満とイライラを本人にぶつけた。
そんな時、いつも彼が決まって言うことがある。
「じゃぁ、どうしたらいいの?」
いつも、彼は自分で答えは出せない。
私に解決する方法を問う。
なので、今回は彼にこう言った。
「人が嫌がることはしない。」
「悪いことをしたら謝る。」
「これからはこう変えていくね、とか、改善方法を示す。」
これだけやって。
そんな話をした。
全て、発達障害者が苦手とすることだ。
彼らは、無意識に相手が嫌がることをする。
そして責められても謝らない。
そして、想像力が欠けているため改善点もイメージできず、改善方法が示せない。
ないものねだりかもしれない。
でも、私はしつこく彼に要求する。
苦手だからといって、しなくていいわけではない。
人が嫌がることはしてはいけない。
悪いことをしたら謝らないといけない。
こう改善すると示さなければいけない。
どれも、小学校レベルだ。
反省文を書く時は、申し訳ないと思うプラス改善方法を書く。
それと同じことのはずだ。
大人になって、発達障害だからといってしなくていいことではない。
大人である限り、頭に叩き込んだらできる限り、やらなければならない。
それが、頭に100回叩き込まなければできないのであれば、私が彼に100回叩き込まなければならないかもしれない。
それが発達障害者の配偶者である妻や夫の役目であるのなら、それほどの労力はないかもしれない。
私も、それほど彼に費やす労力が、いつまで持つだろうか。
まだ、結婚2年半だからできているだけの話かもしれない。
でも、労力がもつ限り、まだ彼への努力は続くだろう。
こうして、不毛だと思われる1ヶ月の闘いに、一応の終止符を打った。
発達障害だと思われる彼に、これだけ事細かく改善を要望しても、実際返ってくる効果は10%以下だと思う。
コスパが悪いことこの上ない。
私は今回の長い戦争が終わっても、またすぐ次の問題がやってくることは予想できている。
まだ、相変わらず触られたくもない状態だが、我がアスペルガー夫は既に、
「俺たちラブラブだよね〜。」と言ってくる無神経ぶりだ。
ある意味、尊敬に値する。
どうすれば、こんなに嫌がられても耐えられるのだろう。
鋼のメンタルを持つのは、いつもアスペルガー側だ。
我がアスペルガー夫とのある喧嘩は、こんな風だった。
みなさんの闘いはどういった風景なのどうだろうか。
参考にはならないかもしれないが、アスペルガー夫に必死で向き合う妻側が、どのように彼と不毛な話し合いや終わらない喧嘩を行なっているか、今回詳しく書いてみた。
近い境遇にいる方にとって、何か少しでも息抜きになれば幸いです。