ほんきっき

アスペルガー夫に悶絶する新妻のほんきにっき

レビュー『一緒にいてもひとり』アスペ夫との実体験から学ぶ

アスペルガー の配偶者や彼氏彼女をお持ちで悩まれている方は、

何冊か発達障害関連の本を読まれているかもしれない。

 

私も、その一人。

 

今日は、ある本を読んだ。

 

 

特にアスペルガー配偶者との夫婦関係で悩まれている方に

参考になるこの本を紹介したいと思う。

 

 

題名は、

一緒にいてもひとり―アスペルガーの結婚がうまくいくために

カトリン・ベントリー著

一緒にいてもひとり―アスペルガーの結婚がうまくいくために

 

実はこの本、

ずっと前から存在を知っていながら読んでいなかった。

アスペルガーの夫を持つ人は必読の書。

そう聞いていながら、なかなか手が出せなかった。

 

なぜなら、題名がさみしい。

 

アスペルガー夫と暮らすということは、

 彼と一緒に過ごしていても一人で生きるということです」

 

題名からすでに、そう言われている気がしてならなかった。

 

でも、日本でアスペルガー結婚について、

実際に上手く行っている例を書いた本が見当たらなかった。

 

日本では、みんな失敗している?

海外のようなアスペルガー研究が進んだ地でないと、成功しない?

 

日本の本ではそんな状況なので、

いつかはこの本を読もうとずっと温めていた。

 

きっと、海外のこの夫婦の例を読めば、なにかわかるかも。

そんな淡い期待をずっと持ちつつも、この本と距離をとっていた。

 

 

そして、ついに今日、この本を手に取った。

 

なぜなら、またここ数日、

夫と些細なことで喧嘩をしていたからだ。

 

こんなとき、

私はなにか心の拠り所を探して本を読む。

 

 

 

さて、この本を読んでまず一番に思ったこと。

 

 

「題名ほどさみしい内容ではない」

 

一緒にいてもひとり。

 

実際は、そんな暗い内容ではなかった。

英語を学ぶ端くれとして、題名の訳し方に少し疑問が残るような。

が、そんなことは置いておいて。

 

アマゾンレビューなどを読んでいても、賛否両論な本書。

 

読み手の状況や考え方、価値観によって、多いに評価が別れる本だ。

 

なぜなら、描かれているアスペルガー夫が、酷い。

そしてその夫を支える妻が献身的すぎて見習いきれない。

 

読み手が、向上心が強く、ポジティブ思考なら、共感できる。

反対に、慎重派で、現実思考なタイプなら、酷評しそうだ。

 

 

内容は、

アスペルガー夫と結婚した女性の結婚実体験を記したもの。

 

 スイス人の女性がオーストラリア人の男性と結婚。

 結婚後すぐに夫の言動行動に不可解な点が多く、喧嘩がたえない。

 国際結婚が原因かと思っていたが、どうもそうでもなさそうだ。

 なぜこんなに喧嘩ばかりなのか、理解に苦しむ。

 子供が2人生まれるが、夫の理解なき行動に悩みながら子育てに奮闘。

 その葛藤の日々を17年続け、ようやく夫がアスペルガーだと気づく。

 診断を受け、夫と自分との違いをお互いが深く理解しあうことにより、

 今では幸せな生活が営めるようになった。

 

こういう、希望的な内容だった。

 

 

しかし、妻のカトリンが描く、夫の非情な言動行動。

読んでいるこちらまで、かなりしんどい内容だ。

 

例えば出産に関わるこんなこと。

 

・陣痛で苦しんでいる妻を前に

 「そんなに痛いはずない。退屈。」と言う

 

・生まれたばかりの子供を手渡され、

 うれしそうに空中に投げて遊び出す

 

・縫い目が痛んで早く歩けない妻に

 もっと急げないのかとイライラする

 

など。

 

他にも多数のひどいエピソードが優しく添えられている。

 

こんなひどい夫を、

「彼のせいではない。アスペルガーというもののせいだ」

「彼はわるくない」

と説明する妻。

 

この考え方に、賛否両論が巻き起こる。

 

そんなひどい夫を大きな包容力で包み込む。

そんなこと、一体だれができると言うの?

 

そういう声も聞こえる。

 

 

でも、こう思う。

 

17年間苦しんできたのなら、

そういう境地に至ってもおかしくないのでは。

 

私はまだうちのアスペルガー夫と結婚して3年。

それでも、すでに自分の精神面が強くなっているのを

多少なりとも感じる。

 

その約6倍、試練を乗り越え続けた先には。

 

どんな冷たい滝に打たれ続けるより、

厳しい試練の数々だっただろう。

 

仏の境地に行くために滝に打たれ、断食するのなら。

 

アスペルガー夫と夫婦生活を過ごすというのは立派な試練。

 

17年やれば、

この著者の女性のような境地に行けることだってあるだろう。

 

 また、20年、30年頑張っても、

こんな境地にはとうてい行けない場合もあるだろう。

 

それもそれで、環境と症状の具合と育ってきた環境が重なり、

人それぞれ。

 

ただ、たまたま上手くいったパターンがこの本に綴られているだけだ。

 

 

 

私は、読んでいてとてもありがたく思った。

 

少なくとも、

アスペルガー夫と上手くいくことができている例がある。

 

それだけですでに、ありがたかった。

 

 

 

彼女はこんなことを書いている。

 

今では、彼がアスペルガーだということを忘れるほどだ、と。

 

診断を受け、お互いの違いを理解したこと。

彼が行動の仕方を工夫するようになったこと。

そうやって、今ではうまくやっている。

 

 

また、関係改善のためには、診断は不可欠だと思う、

とも書かれていた。

 

まだ日本では診断が容易にできる環境ではないが、

それでも、参考になると感じる。

 

三者の意見をアスペルガーが聞き理解することで、

アスペルガー自身が改善に取り組む可能性がある。

 

 

私も、夫を病院に連れて診断してもらおうと計画している。

地域の発達障害センターに電話相談をし、

インターネットで検索し。

 

ここならいいかも、という病院の目星は付け終わった。

 

問題は、2ヶ月後の診察予約しか取れないこと。

 

目先の予定がまったく立てられないアスペルガー夫に、

2か月後のある1日を空けておいてもらうことができるのか。

 

その病院に問い合わせして、

「2か月後の予約、入れておきましょうか?」

と聞かれたときは、思わず一旦お断りしてしまった。

 

その後、夫にこういう病院があること、

2か月後の予約を取ったら、その日を空けてほしいこと、

そういうことを伝えてみた。

 

意外と、「いいよ」と言ってくれた。

多少、ストレスを感じてそうだったが。

 

 

そこから、まだ予約を取っていない。

 

この本を読んで、

「あぁ、そうだ。病院予約しないと」

と、また、荷が重い作業に背中を押してもらった。

 

アスペルガー夫を診断のために病院に連れていく。

 

こんなお互いストレスマックス確実な作業を、

どこかでやりきらないといけないのだろう。

 

 

 

また、著者がこう書いていたのに、

改めてハッとさせられた。

 

アスペルガー 的行動のいくぶんかは単にストレスの結果」

 

この本の中で、

アスペルガーがいかに日頃ストレスを抱えているかが書いてある。

 

人の何倍ものストレスレベルで生きる彼らは彼女は、

ちょっとしたことですぐ爆発し、他人に怒りをぶつける。

 

定形発達の人間のストレスはコップに1/4だけ入っているとしたら、

アスペルガーのストレスはコップに3/4入っている。

だからすぐにあふれてしまう、と。

 

川で言ったら、洪水前の災害直前レベルだろう。

常に、携帯に災害速報がピーピー鳴っているような状態。

 

それが、アスペルガーの日常だと思うと、

なんとも考えさせられる。

 

著者の夫が言うには、

「心がくつろいでいるときがほどんどなく」

「神経は常にサバイバルモード」

だと言う。

 

うちの夫に照らし合わせても、

わかる、わかるの連続。

国境を越えて、アスペルガーの症状に大差はないらしい。

 

 

 

 

この本は、ある海外の女性とアスペルガー男性の夫婦間の話だ。

 

当然、日本人の私たちが手放しで参考にできるものばかりではない。

 

専門家の質や、情報量の豊富さ、支援の得られやすさなど、

違いは多いだろう。

 

 

また、アスペルガー夫が、この本の男性のようにすんなり自覚するか。

この本における「うまくいく」前提は、夫の自覚にある。

 

では、夫の自覚が得られない場合、うまくいかないのか。

それとも、その場合でもうまくいく術があるのか。

 

その質問の答えは、この本には書かれていない。

 

 

でも、少なくともアスペルガーのパートナーと、

「うまくいきたい」と願う人は、一読の価値はあると思う。

 

アスペルガー症候群の症状なども再確認するのにいい。

(ホワイトボード的態度=

 ある最初の情報が消えないインクで書かれる、

 などの説明が興味深いので読んでみていただきたい)

 

また、口論の収め方など、具体的な方法論も興味深い。

 

 

なにより、

どんな内容でも、実体験ほど助かるものはない。

 

専門家がいくら

「ひどいアスペルガーでも我慢することが大事」

と説いても、現実味もなく、机上の空論に感じる。

 

でも、実際に体験した本人が、

「私はこんなことをして、関係改善したよ。対処法はこうだよ」

とアドバイスしてくれれば、聞く気にもなるものだ。

 

 

こんな時代だからこそ。

 

手に入れられる情報はなんでも仕入れ、参考にする。

 

その情報を取捨選択しながら、使えそうなものを使う。

 

いろいろ、試してみる。

元気な限り、頑張ってみる。

 

どれだけ頑張ってもダメなら、諦める。(別れる)

 

 

そんなスタンスで、これからも積極的に情報収集に努めたい。